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Strymonのサウンドデザイナーのピート・シーリー氏、El Capistanを語る。

  • 2021年4月11日
  • strymon
Strymonのサウンドデザイナーのピート・シーリー氏、El Capistanを語る。

今回は、2010年の発売から長く愛され続けているテープエコーマシーンEl Capistanについて、Strymonの共同創設者にして、サウンドデザイナーのピート・シーリー氏に伺いました。

Pete Celi at home office

Q1. El Capistanが発売されて、もう10年以上になりますね。これはBrigadierのdBucketテクノロジー以来、テープエコーサウンドを再現するという、難しいプロジェクトだったと想像します。dTape関するホワイトペーパーでは、メカが音に与える影響などが詳しく紹介されていますが…。今回はEl Capistan(dTapeテクノロジー)の開発時のお話を少し紹介してください。

Pete:そうですね。El Capistan は2010年にリリースされたので、それからかなり経ちました。それでもまだ今日のエフェクター市場で人気があり、愛され続けているのは、とても喜ばしいことです。

El Capistanをリリースした時、我々の知る限り、テープディレイ専用のペダルはありませんでした。テープディレイは、異なるメンテナンスの状態によって、表現できる音を幅広く追究できるプラットフォームであり、ユニークな特性を持っていると言えるでしょう。

テープパスへのごくわずかな調整が、音に大きな違いをもたらすことを私たちは発見しました。例えば、再生ヘッドの角度をほんの少し調整するだけで、エコーのEQに劇的な違いが生じます。さらに、Wow&Flutterの量とテープ自体の品質が、音質に大きな違いを生みだすことにも気づいたのです。また、バイアス調整はヘッドルームと高域周波数成分に影響を与えました。マシンの様々なメンテナンスの状態によって、その音質が変化するのです。したがって、「正常」と考えられる一連のパラメータにこだわるのではなく、柔軟なコントロール設定も取り入れることで、プレーヤーそれぞれが求める「完璧な」テープディレイサウンドを楽しめるようにしました。

確実にエコーサウンドを再現するために、メカニカルとエレクトリカルの両システム全体をDSPで再現し、ヘッドの再生速度が可変するテープパスによって、テープの記録/再生プロセスの本質を捉えました。バイアス信号、テープの劣化、およびヘッドの隙間などによる音への影響が、すべて考慮されています。こうした機械のあらゆる「欠陥」こそが、サウンドに『テープディレイの魔法』をもたらすのです。


Q2. “Single ” のリファレンスは70 年代の古いエコープレックス (EP-2) 、”Fixed”はローランドREですね。では”Multi”の元になったリファレンス機は何でしたか?

Pete:El Capistanの”Multi”設定は、ヘッドが均等に配置されているローランドRE-201のマルチヘッドオプションを参考にしました。ヘッド1+2、ヘッド2+3、あるいはヘッド1+3といった付点8分のリズムや様々なヘッドタイプを再現できます。たとえば、1 秒 (60 bpm) をタップインすると、ヘッド2+3 は 500ms と 750ms でエコーを再生します。


Q3. それぞれの “TAPEHEAD”タイプで最もクリーンな設定をした場合、どのサウンドが好きですか? また、お気に入りのテープサウンドはどれですか?

Pete:“Single”は、移動できるスライド・録音ヘッドが遅延時間を設定するEP-2のシステムを参考にしました。”Fixed”および”Multi”はヘッド固定ですが、選択されたヘッドがアクティブ(遅延時間を決める)になり、異なるテープスピードで様々なディレイタイムを作り出せるRE-201をリファレンスしたんです。

“Single”ヘッド設定は、”Fixed”および ”Multi”の設定と比較すると、最初のエコーにもう少し「パンチ」があり、その後のリピート音はより急速にローエンドが減衰します。私の好きな音はモードA(ショートディレイ)で動作する“Single”設定です。これは、鮮明なパンチの効いたリピート音を生みだすことが出来ます。しかし一方で、私はTimeノブが高く設定された”Fixed”ヘッドも好きです(Cのロング・ディレイに設定します)。この設定では、まろやかな効果が合わさり暖かく上質なディレイが得られます。


Q4. “TAPE HEAD”ごとの”サチュレーション”の違いについて教えて下さい。その中でお気に入りはありますか?

Pete:サチュレーションのメカニズムは各設定とも似ていますが、サチュレーションの度合いを決定するのは録音されるオーディオです。“Single”ヘッドでは、少しアグレッシヴなフィードバック信号を得られますが、サスティーンが効いたサチュレートサウンドは早く消えていってしまいます。”Fixed”ヘッドは発振間際のサウンドをもう少し細かくコントロールが出来ます。お気に入りの特定なサウンドというよりは、私は異なるモードを色々と試してみて、新しい音を発見できるのが大好きです。

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