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Strymon Iridium開発メンバー、マーク・マクライト氏 特別インタビュー

  • 2021年6月10日
  • strymon
Strymon Iridium開発メンバー、マーク・マクライト氏 特別インタビュー

今回インタビューに答えてくれたマーク・マクライト氏はStrymonの共同創設者であるグレッグ・ストック氏と共にStrymon Iridiumの開発に携わった中心メンバーの一人です。この製品がこれほど驚異的なオーディオを実現し、成功を収めた「秘密のレシピ」に迫るため、詳しく開発秘話を聞いてみました。

マーク・マクライト氏(製品開発担当)

Question 1
Idiriumの「Punch」設定は、1959年のMarshall® Plexi(モデル番号1959 Super Lead)に基づいていると言われています。しかし、1967または1959 JCM800 Super Lead(Plexiパネルを備えたモデルではないもの、しばしば’1959’と呼ばれるモデル)のようないくつかの異なる「Plexi」サウンドモデルが存在しました。トーンやボイシングのインスピレーションはどの1959アンプからですか?回路図を見るとJTMと800では大きく異なっていますね?

マーク・マクライト氏
開発時には特定のモデルに焦点を当てていませんでした – Punch設定を作る際に参照した回路図は「Marshall 1959」でしたが、具体的にどのモデルだったかは定かではありません。マーシャルアンプの多くは、基本的には同じ信号パスにいくつかの異なるオプションを加えています。しかし、もともとリファレンスにしたアンプよりも、Punch設定には広範囲にわたるカスタマイズを施す計画だったので、オリジナル回路設計にくまなく焦点を当てたわけではないのです。

また、JTM45とJCM800の具体的な違いについてですが、回路図は表面的にはかなり似ていますが、JCM800はよりアグレッシブなドライブキャラクターのバイアスがかけられ、2ゲインステージが直列につながっておりエクストラゲインが生まれるようになっています。さらに、JCM800 はフェーズインバーターの前にマスター・ボリュームも追加されています。


Question 2
「Punch」設定は1959年よりもはるかに高いゲイン範囲を持っているように思います。よりハイゲインなサウンド設計にした理由は何ですか? ソルダーノ(SLOはSuper Lead Overdriveの頭文字)、ボグナー、フリードマンのような「Marshall Mod」アンプで聴かれるようなサウンド領域までカバーするのが狙いだったのでしょうか? また、実物のアンプには、時として電源供給の低下による「サグ」が生じますが、それをより高いゲイン設定でも取り入れたということでしょうか?

マーク・マクライト氏
その頃、ハイゲイン・アンプのサウンド領域に入ろうとしていたことは事実です。ですから、より強烈なフロントエンドで、更なるゲインを得られるように、アナログJFETフロントエンドを使用しました。しかし、なにか特定のアンプのアーキテクチャを複製しようとしたわけでありません。よりハイゲインな設定で起こる「パワーサグ」もエミュレートしています。

*パワーサグ:サグ (瞬間電圧低下)。チューブアンプ原始的な電源回路によって起こる現象で、演奏のパッセージでアンプの音量が少し下がり歪みが増える。


Question 3
「Punch」のためにこれら3つのIRプリセットを選んだ理由は何ですか?

GNR 4×12″ by OwnHammer
Impulse of a 1971 Marshall® 1960B “basketweave” 4×12″ cabinet with 1971 Celestion T1221 G12M-25 speakers

2×12″ Vintage 30 by Celestion
Impulse of a Celestion Vintage 30 in an open back 2×12″ cab.

Marshall 8×12″ AlNiCo by cabIR
Impulse of a 1965 Marshall 8×12″ re-issue full stack cabinet, with Celestion T652 AlNiCo speakers.

これらのIRは特定の音楽スタイルに合わせて選ばれたのか、1960年代、70年代、80年代のクラシカルなトーンに合わせて選ばれたのか、どちらでしょうか。

マーク・マクライト氏
私たちがIridiumのIRで成しえたかったことが3つあります。一つ目は音質。そして古典的なトーン、さらにバラエティ豊かな音です。各 IR ベンダーと協力して、それぞれの IR ライブラリとアンプとの最良な組み合わせについてペアリングを探しました。各ベンダーは、典型的な組み合わせと少し予想外の組み合わせの両方でトーンをセレクトしてくれました。その後、共同創設者のピート・シーリー(DSPエンジニア/サウンドデザイナー)が、幾度も試聴と検証を重ね、その中から音質とバラエティの面で最も優れたものを最終的にセレクトしました。ですので、各バンクのAスロットは典型的な構成のステレオIR、BとCスロットでは、馴染みのあるものと少し意外な組み合わせとなっており、それぞれ異なるキャラクターをもった素晴らしいサウンドが得られます。


Question 4
YouTube ではよく「Iridiumでメタルが演奏できるのか?」といったテーマで動画が制作されています。プレイヤーが「Punch」設定でメタルも演奏できるレベルのゲインを得るにはどうするのがお薦めでしょうか。

マーク・マクライト氏
アンプをよりハイゲインで鳴らしたい場合の一般的な方法は、ベース、ミドル、トレブルコントロールノブをMAXにして、トーンスタックから得られる最もホットな信号を得ることです。Iridiumでハイゲインサウンドを得るには、”Chime”の設定で各EQを上げることです。 –  BASSはフル10に、TREBLEは、少なくとも12時以上の位置に設定します。”Chime”設定の場合、MIDノブは、右に回すほど高周波数をカットするローパスフィルタとして機能するので、この設定の場合はMIDノブを低いままにしておくことも大切です。さらに高いゲインが必要な場合は、Iridiumの前にブースターやオーバードライブをつなぐことももちろんできますし、さらにご自身でお気に入りのカスタムIRをIridiumにロードして入れ替えられる、という方法も忘れないでください。

*Iridiumは入力後すぐにADする回路ではないため、先に述べたアナログJFETフロントエンドをドライブしてさらに高いドライブサウンドを得ることができます。


Question 5
7弦ユーザーのプレイヤーに、お薦めの設定とアンプ/キャビネットの組み合わせはありますか?

それはなかなか難しい質問ですね。というのは、そのプレイヤーが7弦ギターのサウンドに求めるものは何なのかということにもよるからです。多くの7弦ギターユーザーは、よりヘヴィな音を好むでしょう。Iridiumを活用して、そうしたメタルサウンドに最適な、より歪んだゲイン音を得るのであれば、先ほどの4つ目の質問でお答えしたお薦め方法が応用できるはずです。とは言え、7弦ギターでできることは多岐にわたります。クリーンサウンドをはじめ、より少ないゲインで鳴らしたいのなら、”Chime”と”Round”アンプの設定で、7弦ギターにも活用できる素晴らしい多彩なトーンが得られますよ。