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ギタリスト 増崎孝司 氏が語る DIG / DECO レビュー

  • 2015年9月9日
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ギタリスト 増崎孝司 氏が語る DIG / DECO レビュー

増崎さんの所属する「ディメンション」は、’92年の結成から実に26枚ものアルバムをリリースしてきた、日本を代表するインストゥルメンタル・グループです。ジャズ、フュージョン、ロック等のエッセンスが複雑かつスタイリッシュに絡み合うその楽曲は、TVやCM等で非常に多く使用されており、きっと耳にしたことがある方も多いと思います。

ギターを担当する増崎さんは、メンバーそれぞれがセッション・ミュージシャンとして幅広い活動をしているディメンションの中でも、浜田麻里さんのサポート・ギタリスト(’87〜)や、近藤房之助さん率いる「B.B.クイーンズ」への参加でも知られています。

今回は、増崎さんのDECOとDIGを使用した感想や機材選びに対するこだわりを伺ってきました!

DECOはどのように使用されていますか?

El Capistanと組み合わせて、アナログ感を出しています。基本的にクリーンアンプの音をDECOで「押し」て、太さを出すよう使っています。

テープディレイはショートに設定して、ダブラーとして使っています。コーラス効果が得られるからです。しかも音が奥に引っ込まないようにBLENDでテープヘッド側のボリュームを大きくしています。あれは非常に良いです!手にして、すぐにこの使い方に気が付きました。1台で、ブースターと深いコーラスが同時に得られる優れものですね。

テープディレイとテープコンプレッション… アナログレコーディング時代をご存知の増崎さんは、DECOのエフェクトクオリティーはどう評価されましたか?

DECOのSATURATIONを上げると、ちゃんとテープエコーのヘッドで歪ませているサウンドがします。 実は皆さん、DECOの本当の「良さ」に気が付いてないではないしょうか? 普通のブースターのように音量自体を底上げするのではなく、歪まないアンプに突っ込んで、太くなる感じ… つまり全面的にボリュームを押してあげるサウンドになります。 例えばマーシャル系のアンプを歪まない設定にしてDECOで歪ませると、これ以上ボリュームが入らない、ヘッドルームが歪んでいる「本当の」マーシャルの音がするのです。

今時の「歪みきる」アンプは、実は音の「抜け」が悪い傾向にあります。昔のヴァン・ヘイレンの歪みなんかは凄く歪んで聞こえますが、実は歪みきっていないのです。なので、昔のアンプやリイッシュー物を弾いて「何か違うな」と感じる人は、DECOで「押して」あげると、明確に狙ったサウンドが得られると思います。 実は著名なミュージシャンは、みんな明かされてない秘密の機材でサウンドを「押して」ました。 今と違い、その時代は「今あるものを使って良い音にしよう」としていた訳です。 昔のセッションミュージシャンが、非力なピックアップの音を力強いサウンドにしようと、入力オーバーにして太さを出していたサウンドを、DECOは上手く表現していると思います。

「綺麗さ」が特徴のStrymonですが、DECOは他の機種と逆の発想にあるエフェクターですよね。だから筐体もあの色なのかなって思いました。 昨今の音楽ではどうしてもパッセージが速いので、太いサウンドだと弾き辛いと言うのもあるかもしれませんが、一度で良いからそのサウンドの太さは体感して欲しいですね。

— 増崎流のDECO使いこなし術やセッティングをご紹介ください。

最初はDECOをギターの直後に接続していたのですが、一番効果が得られるのはアンプの直前だと気が付きました。ゲインを「押す」ために使用するので、直列の場合でも、空間系の後ろにDECOを接続します。テープエコーでコーラス効果を得る時にも、それが一番バランス良かったです。

アンプがクリーンとディストーションの2チャンネルしかなく、クランチも欲しい人は、アンプのディストーション・チャンネルをクランチに設定してDECOで押す方法をお勧めします。最初からゲインが「フル」の状態だと、もう足せないですからね。

僕は複数のブースターを使用していますが、それは1つでは出せない効果があるからなのです。人によってはDECOが中途半端なギアに見えるかもしれませんが、「SATURATIONでゲインを押せる」「テープのディレイでも押せる」と言う考え方をしないと勘違いしたままになってしまいます。そうすると1+1が5になる組み合わせを見つける事ができると思います。

最後に、DECOをリアンプ方式で後かけするエンジニアの話を聞いたことがあります。増崎さんはレコーディングでもDECOを使われますか?

今は主にライブでしか使用していませんが、レコーディングでのサウンドメイキングにも積極的に使用していきたいと思っています。


DIGのファーストインプレッションをお聞かせください?

Strymon製品を初めて試した時から、いつか19inchラック機材の代わりになる同等の物が出てくるのでは言う予感はしていました。 今までEl Capistanをずっと使ってきて、El Capistanに不満はないのですが、もっと綺麗なディレイが取り出せたらなと思っていた時に販売直前のDIGのプロモーション動画を目にしました。動画ではU2みたいなディレイの使い方が主でしたが、これは単体のサウンド・クオリティーも凄く良いと直感的に感じ、試さずに買いました。実際に弾いたら、僕がLEXICONのPCM81で出していた効果が、そのまんま出たのです!

実際に80年代のデジタルディレイを試したことはありますか?

一番使っているLEXICONのPCM81は90年代モデルですが、80年代の物も本当に色々と使ってきました。DIGはサウンドの特徴を良く捉えていると思いますし、むしろ当時の物より良くなっている部分が多くあります。 まず、DIGにしろEl Capistanにしろ、まず音が痩せない。昔の機材は音が痩せていく。「新しさ」「古さ」どちらを求める人にも何も不満がないと思います。 音が変わったとか、位相が変わったと言うのを考えなくて良いのも素晴らしいポイントです。昔の機材は相性もありましたし、アンプのセンド/リターンも優秀ではなかったですし、ロー・インピーダンスに落ち切っていない物もありました。今なお人気のラック・ディレイも、接続すると位相が反転すると言う特徴がありました。それらの問題点を修正するインターフェースを使用せず使える機材ってそこまで無いのです。

DIGはディレイを2台結合した状態を再現できますが、どのように使用していますか?

昔の機材のように各機材間の細かい設定をしなくて良いですね。奥行きのあるディレイを作りたい時など、レコーディングではステレオ出力で使用しています。 ライブではスペースの関係でモノラル出力ですが、背中でディレイを感じられるのが良いですね。

El Capistanとの使い分けは?

DIGはビット数によって耳で感じられるサウンド感が変えられるに対して、El Capistanは最初から狙ったサウンドだけがバシっと出ますよね。El Capistanはテープ感を狙って使うのにはバッチリですが、毎回それを使うとラウドなサウンドの時には聞こえ辛くなってしまうこともあります。そんな時にDIGは活躍してくれます。

DIG は、どのような設定で使っていますか?

僕がディレイに求める効果は、ディレイがLRで交互に不規則に散っていく感じのエコー感なのです。4分音符や付点8分音符のプリセットがありますが、僕は敢えてそれをリンクさせずに使用しています。僕が求めるエコー感はDIGが文句なしに再現してくれますし、それを少ないツマミで操作できるのが素晴らしいですね。エンジニアも凄く綺麗なディレイだと絶賛しています。音場の効率を良くするディレイとして最高の1台だと思います。そこにリバーブ感を与えるためにFLINTをプラスしています。80’sのリバーブとして使っているFLINTとDIGの組み合わせが、今のところ自分にとって最高のタッグです。その当時のサウンドを狙った組み合わせと言うより、ベテランと若いミュージシャンが共演した時に産まれるような感覚です。より「深さ」が出ます。


増崎孝司 / Takashi Masuzaki / Guitar

80年代中期にプロとしてのキャリアをスタートし多数のアーティストのライブサポートやレコーディングに参加する。1991年『Speaks』、翌年『Escape』のソロアルバム発表。1992年にDIMENSION結成。今 秋、通算28枚のアルバムを発表。2011年には3枚目のソロ作「In and out」を発表。そして2014年には編曲家の船山基紀氏とのコラボユニッ ト「Moto&Masu」をスタート。Jazz/Fusionの枠にと らわれず、様々なジャンルのコンサートのサポートやレコーディング活動、そしてギタリストとしてアーティスト活動を行なっている。


最新アルバム:DIMENSION「28」

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