audient オーディエント asp800

技術白書 マイクプリ mic pre ADコンバーター レコーディング DAW recording

asp880

ASP800:技術白書

HMX & IRON : サイエンスに裏打ちされたサウンド

この写真は、ASP800のRETRO Ch.1 / Ch.2のプロトタイプ基板です。マイクプリの心臓部であるClass-A ディスクリートMOSFET回路段は、32V電源でドライブされています。(非常に高いダイナミックレンジとローノイズのために) Audient ロゴの入った小さなボックスは、600ΩのAudientカスタムトランスでIRONサチュレーターの重要な役割を果たします。IRONノブのポテンションメーター(コントロールボリューム)は、3つのパラメーターを同時にコントロールしています。一つのコントロール・ノブで複雑な調整をシンプルに行い、最良のキラー・サウンドが得られるようにパラメーター設定しました。

 

信号の流れ

 

まず信号の流れを明確にしておきましょう。フロントパネルは、左からHMX→IRONにレイアウトされていますが、実際の信号の流れはIRON→HMXの順です。開発段階に内部ジャンパーで回路を変更しながらリスニングテストを繰り返して、この順序を吟味しました。

IRONをHMXの前段に配置すると、クリーンなミッドレンジと煌びやかさを両立するさせることが出来ました。これは、入力トランス→ゲインステージへと繋がるクラシックなマイクプリアンプの特徴に似ています。HMXは、ややコンプレッション気味のサチュレーション・キャラクターですから、トランジェントのディティールを後段に送れません。よって、IRON→HMXでバランスの取れたサチュレーションを得られるようにしました。

参考までに、ブロックダイアグラムをご覧ください。

 

IRON - Saturator 1(サチュレーター1)

 

それではIRONから見ていきましょう。IRONセクションには本物のトランスフォーマー(以下トランス)が使用されています。トランスは1950年代以前より、様々なオーディオ機器に使用されてきたコンポーネントです。このトランスで、インピーダンス変換とデバイス間のレベルのマッチングを取ります。また、回路の分離、バランス入出力の回路構成にも使われますし、ノイズ面での恩恵もあります。しかし、重量、コスト面から、80年代には多くの設計者達はトランスレス回路のデザインを手がけるようになりました。

トランスにはマグネットコアでの誘磁ヘッドルームの限界から、低域の周波数を歪ませる特性があります。(サイン波のピークがサチュレーションを起こしている図を参考にしてください。)これは“コア・サチュレーション”と呼ばれ、70年代の多くの機材はその特性を持っていました(当時はそれを意図はしていませんでした)。ASP800ではそのサチュレーションを得る為に、小さなトランスが組み込みました。

トランスによるディストーション波形は対称であり、3次倍音を多く含みます。ギターのパワーコードのような、オクターブ+5度の音ですね。もしかしたら、Rockerがトランスの搭載された古い機材が好きな理由もここにあるのかもしれません。 トランスは他の特徴に、フェイズシフトと周波数帯のリミッティングがあります。これはトランスの巻線どうしの空間によるパラスティック・キャパシタンスとレゾナンスで、高域の再現性は失われロールオフという形で現れます。トランスにかけるZ負荷を調節することで、この値を制御することは可能です。

 

 

 

『ASP800はトランスのダンピングとロードを制御することで、独特の空気感や煌めきのあるサウンドを実現しています。70年代の英国のヴィンテージ機器と同様、15kHz辺りから上を2.5dB程度ブーストした特性です。』

トランスには磁気テープと同じ特徴の“ヒステリシス特性”があります。- これは信号が磁気変換され、トランスの1次側から2次側のコイルに移動する過程で起こります。信号を溜めこみ遅らせる現象が発生します。音で説明すると、鋭いトランジェント信号を丸めてくれる為、スネアドラムやアコースティックギターの不要なトランジェントを取り除いてくれます。

このIRONサウンドを完成させる為に、更にシングルエンド・クラスA・MOSFETドライブと、ゲインリカバリー・アンプが採用されています。これにより偶数倍音が加えられ、さらにリッチなサウンドが生まれます。 ブロック図のように、IRON回路は複雑な相互作用を発生するパラメーターによって構成されています。

HMX - Saturator 2(サチュレーター2)

 

HMXはHARMONICS(ハーモニクス:倍音)の略で、3段のサチュレーターです。ギターアンプのプリアンプのように、直列に配置された3基のアンプで段階的に歪みを増やしてきます。この方法は、高い歪み量でもスムーズなサウンドを実現してくれます。HMXは評価の高かったAudient Black Seriesのモジュラーや、名機と言われたシングルエンドの真空管アンプでも採用された回路です。ハイボルテージ(32V)とACカップリングされたアンプステージで構成されています。

さらに、スウィートなオーバードライブサウンドを実現する為、ここにもう一つの秘密があります。

『それは、HMXがプリエンファシンス&ディエンファシス・フィルタリングにより、トーンシェイプされたディストーションセクションだということです。』

HMXは低域にフォーカスしたキャラクターを持っており、そのディストーション回路の前で低域をブーストしています。更に、音量レベルと周波数変化を一定に保つ働きも併せ持っています。この時のディエンファシスとプリエンファシスは同周波数で働くわけではなく、独特の低域の膨らみが生まれます。それは、50Hz近辺が中心周波数で150Hz以下が持ち上がった特性になります。これは『テープヘッド・バンプ』効果に似ています。バスドラム、シンセベースや男性ボーカル等に効果的です。

 

 

IRONとHMXの二つのRETROサチュレーターを組み合わせることによって、無限大に広がるサウンドメイキングを可能にしてくれます。
そのIRONとHMXのサウンドは、Audient Sound Cloud アカウントでも視聴が出来ます。まずはその魅力的なサウンドを聴いてみてください。

https://soundcloud.com/audientworld

ページの先頭に戻る